●病態
・赤血球膜上の抗原に対する自己抗体により赤血球が破壊される.以下の3つが主要な病型であり,それぞれ溶血の場や機序が異なる.
a)温式AIHA
b)冷式AIHA:①寒冷凝集素症(CAD:cold agglutinin disease),②発作性寒冷血色素尿症(PCH:paroxysmal cold hemoglobinuria)
・症状として溶血性貧血に共通する貧血・黄疸以外に,CADでは末梢血流障害による末端チアノーゼを,PCHでは低温環境での血管内溶血発作(突然の発熱,腹痛,血色素尿)をしばしば認める.
・一般検査ではヘモグロビン(Hb)低下,間接ビリルビン(Bil)上昇,LDH上昇を認める.確定診断には直接抗グロブリン(クームス)試験を行う.
●治療方針
発症時にはHb<6g/dLに低下していることが多く,全例で入院管理が必要である.病型の診断には赤血球寒冷凝集反応や不規則抗体検査,Donath-Landsteiner(ドナース・ランドスタイナー)試験など検査に時間を要するため,これらの結果を待つことなく,直接抗グロブリン試験陽性が判明した時点で治療を始める.
A.一般療法
1.酸素投与
貧血による組織虚血や心不全の防止を目的にすみやかに酸素を投与する.貧血では経皮的酸素飽和度は低下しないので注意が必要である.
2.保温
冷式AIHAでは寒冷曝露により溶血が増悪するため,空調や電気毛布などで身体の保温(特に四肢)に努める.軽症例では保温のみで溶血の改善が期待できる.
B.薬物療法
1.副腎皮質ステロイド
温式AIHAとPCH,CADのうちの低力価CAD(凝集素価が低くても30℃以上で凝集する)では有効である.通常の高力価CADでは溶血抑制は期待できないが,前述のとおり病型診断まで時間を要するため,実際には短期間だけ使用することが多い.
Px処方例 重症例では➋のパルス療法を3日間行
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