治療のポイント
・血友病の治療は,出血時補充療法と定期補充療法の2つに分けられる.
・出血時の凝固因子製剤の投与量や投与間隔は,出血の部位や程度によって異なる.
・重症血友病では,関節障害の発症前に,一次定期補充療法を開始することが望ましい.
・半減期延長製剤により定期補充療法の静脈注射の回数を減らすことが可能となった.
・さらに,血友病Aでは皮下注射製剤のヒト化二重特異性モノクローナル抗体であるエミシズマブによる出血傾向の抑制ができるようになった.
・インヒビター保有症例の出血時はバイパス止血製剤を用いる.インヒビター値が5BU/mL未満の場合には,重度の出血時に中和療法が行われる.インヒビターを消失させる治療として免疫寛容導入療法が行われる.出血予防として,活性型プロトロンビン複合体製剤の定期投与以外に,血友病Aのインヒビター保有患者ではエミシズマブが使用可能となった.
●病態
・血友病はX連鎖劣性遺伝の出血性疾患であり,幼少期より足や膝の関節出血など重度の出血症状を反復する.同じ関節に出血を繰り返すと標的関節となり,進行すると血友病性関節症となる.
・凝固第Ⅷ因子(FⅧ)の量的・質的異常である血友病Aと,第Ⅸ因子(FⅨ)異常症の血友病Bに分類される.
・2016年度血液凝固異常症全国調査(厚生労働省委託事業)では,国内の患者数は血友病Aが5,103人,血友病Bが1,097人と報告されている.
・診断には幼少期から反復する特徴的な出血症状と家族歴の問診が大切であるが,孤発例が1/3程度あるため注意が必要である.血液検査では,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長し,通常は凝固一段法により,FⅧ活性あるいはFⅨ活性が単独に欠乏・低下している場合に血友病と診断される.凝固因子活性が1%未満は重症,1%以上5%未満は中等症,5%以上は軽症に分類される.重症血友病Aの約20~30%にFⅧ
関連リンク
- 臨床検査データブック 2023-2024/活性化部分トロンボプラスチン時間〔APTT〕 [保] 29点
- 今日の治療指針2023年版/乾燥濃縮人プロトロンビン複合体
- 臨床検査データブック 2023-2024/凝固因子活性検査 第ⅩⅢ因子 [保] 223点(包)
- 今日の治療指針2023年版/血友病(von Willebrand病などの遺伝性凝固異常症を含む)
- 新臨床内科学 第10版/【3】血友病
- 新臨床内科学 第10版/【4】後天性血友病A
- 新臨床内科学 第10版/【6】その他の先天性凝固因子欠乏症
- 新臨床内科学 第10版/【2】プロテインC欠乏症,プロテインS欠乏症
- 今日の診断指針 第8版/血友病・後天性血友病A