診療支援
治療

Langerhans細胞組織球症
Langerhans cell histiocytosis(LCH)
森本 哲
(自治医科大学小児科学・教授)

●病態

・Langerhans(ランゲルハンス)細胞組織球症(LCH)は乳幼児に好発し,多彩な症状を呈する「炎症性骨髄性腫瘍」である.

・病変部には,MAPキナーゼ経路の遺伝子に発がん性変異があり未熟樹状細胞の形質をもつLCH細胞〔CD1aとCD207(Langerin)陽性〕の増殖と,それに反応した種々の炎症細胞の浸潤を認める.

・病変が単一臓器のみのSS(single-system)型と,多臓器にわたるMS(multi-system)型に分類される.SS型のほとんどは骨病変でありMS型では骨や皮膚のほか,肝,脾,肺,造血器,胸腺,消化管,中枢神経など全身臓器に病変が出現する.

・肝または脾,造血器に病変のあるMS型は生命予後不良で,これらはリスク臓器とよばれる.特に初期治療反応が不良の場合,予後はきわめて悪い.

・軟部腫瘤を伴い眼窩や側頭骨,乳突洞,蝶形骨,頬骨,篩骨,上顎骨,副鼻腔,前頭蓋窩,中頭蓋窩に病変がある例は中枢性尿崩症(CDI:central diabetes insipidus)や中枢神経変性症(ND-CNS)の発症率が高く,これらはCNSリスク病変とよばれる.

・しばしば再発し,特に再発例ではCDIやND-CNS LCHなど重大な非可逆的合併症を続発することが多い.

●治療方針

 自然治癒する例から急速に致死的となる例まであるため,全身検索により浸潤臓器を確定し病型に応じた治療が必要である.多発骨SS型およびMS型は化学療法が必須である.手術療法は確定診断のための生検を主目的とし,放射線療法はoncologic emergencyに限られる.リスク臓器病変陽性MS型の初期治療反応不良例に対しては,病勢を鎮静後の骨髄非破壊的前処置による造血細胞移植が有望である.

A.限局骨および皮膚SS型

 自然治癒が期待できるため,無治療経過観察またはコルチコステロイド(CS)の局所療法を

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?