診療支援
治療

血球貪食症候群
hemophagocytic syndrome(HPS)
中沢洋三
(信州大学小児医学・教授)

●病態

・さまざまな病因を背景に,過剰に活性化したリンパ球からサイトカインが多量に放出され,それによって活性化したマクロファージによる血球貪食や高サイトカイン血症が起こり,発熱,肝脾腫,汎血球減少症などをきたす疾患群である.

・自然治癒する軽症例も存在するが,表1の「血球貪食性リンパ組織球症 診断の手引き」(以下,「HLH診断の手引き」)を満たした場合は血球貪食性リンパ組織球症(HLH:hemophagocytic lymphohistiocytosis)とよばれ重症となる.

・HLHと診断された患者の約10%は,致死的な播種性血管内凝固症候群(DIC),日和見感染症,多臓器不全をきたす.

・HLHは病因から一次性と二次性に分類される.一次性HLHは家族性HLH(FHL)1~5型,X連鎖性リンパ増殖症などの原発性免疫不全症の一症状として発症する.一方,二次性HLHは感染症,悪性リンパ腫,自己免疫疾患,同種造血幹細胞移植後,薬剤過敏症などに続発する.一次性HLHは主に乳児にみられるが,二次性HLHは全年齢層に発症する.

・小児では感染症関連HLHが最も多く,次いで自己免疫疾患関連HLHが多い.一方,成人ではリンパ腫関連HLHが多い.

・感染症関連HLHでは,EBウイルス(EBV)関連HLHが約半数を占め,ほかにサイトメガロウイルス,アデノウイルス,ヒト単純ヘルペスウイルス(HSV),水痘帯状疱疹ウイルス,ヒトパルボウイルスB19,パラインフルエンザウイルス,インフルエンザウイルス,結核菌,黄色ブドウ球菌,口腔レンサ球菌,肺炎球菌なども起因となる.

・自己免疫疾患に付随して発症した血球貪食症候群(HPS)はマクロファージ活性化症候群(MAS) ともよばれる.MASは全身型特発性関節炎,次いで全身性エリテマトーデス(SLE)に多くみられる.

・小児の悪性腫瘍では,未分化大細胞リンパ腫と多臓器型

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