診療支援
治療

中枢神経外胚細胞腫瘍
extracranial germ cell tumors
寺島慶太
(国立成育医療研究センター小児がんセンター脳神経腫瘍科・診療部長)

●病態

・胚細胞腫瘍は乳幼児から若年成人までの幅広い世代の,身体の正中を中心に発生する多様な組織病理からなる腫瘍の総称である.摘出術のみで十分な良性腫瘍から,術後化学療法を行っても救命できないこともある悪性腫瘍まで,臨床経過もさまざまである.

・本項では,頭蓋内発生を除く胚細胞腫瘍について,米国国立がん研究所のPDQ(Physician Data Query)および日本小児血液・がん学会の「小児がん診療ガイドライン2016年版」に則り,その治療指針を概説する.

●治療方針

 頭蓋外胚細胞腫瘍は,性腺(精巣・卵巣),性腺外という原発部位,良性か悪性かという組織学的分類,腫瘍の広がりである病期ステージ,そして発症年齢によって治療方針が決まる(表1).また血中の腫瘍マーカー〔AFP(αフェトプロテイン)およびβHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)〕が診断,亜分類,治療効果判定に有用であり,治療開始前および治療中,治療後に定期的な測定を行う.

A.手術療法

 原則として,可能ならば一期的全摘を目指す.性腺原発腫瘍と乳幼児の仙尾部腫瘍の多くは一期的全摘を行い,その後のリスク評価により化学療法を追加することが推奨される.しかし性腺外原発の悪性胚細胞腫瘍では診断時に病期が進んでいることが多く,一期的全摘が困難な場合は生検後に術前化学療法を行い,二期的な腫瘍摘出術を目指すことも考慮する.

B.化学療法

 小児胚細胞腫瘍患者に対する標準的化学療法は,PEb療法4コースとJEB療法4~6コース(腫瘍マーカー陰性化後2コース追加)である.

 PEb療法は,成人の悪性胚細胞腫瘍の標準治療であるBEP療法のブレオマイシンを減量した以下のレジメンであり,JEB療法は,シスプラチンの毒性軽減を目指しカルボプラチンで代用したレジメンである.

1.PEb療法

Px処方例 下記➊~➌を4コース行う.

➊シスプラチン注 1回20mg

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