診療支援
治療

腎移植
kidney transplantation
服部元史
(東京女子医科大学腎臓小児科学・教授)

 移植臓器にはドナーの愛情や期待が託されており,さらにそのチャンスは限られているため失敗は許されない.そのため腎移植に際しては,周到な移植前準備,万全の術中・術後管理,そして注意深い外来管理が必要である.

A.移植前準備

1.ワクチン接種

 免疫抑制薬服用中は生ワクチンの接種ができないため,移植前に接種し,抗体獲得を確認する.

2.原因疾患・合併症の把握

 原因疾患・合併症に応じた移植前治療(例えば膀胱尿管逆流を伴う低・異形成腎では移植後感染巣となりうるため,術前や術中に摘出,重篤な下部尿路障害を伴う場合には導尿ストーマを作成など)が必要である.

3.その他

 術中に水分負荷を要するため心肺機能のチェック,移植腎動静脈血管吻合予定部位の血管異常の有無(下大静脈の閉塞など),移植後に原病が再発するリスクの評価(巣状分節性糸球体硬化症や補体関連溶血性尿毒症症候群など)等々,移植前の精査が重要である.

B.術中・術後・外来管理

 本項では特に免疫抑制療法と怠薬,移植後感染症についてとりあげる.

 新しい免疫抑制薬の開発臨床応用と術中・術後管理の進歩により小児腎移植の成績は経年的によくなっている.日本小児腎移植臨床統計小委員会からの報告によれば,2002~2014年の期間に実施された小児腎移植患者の10年生存率は98.1%(生体腎移植)と96.6%(献腎移植),10年移植腎生着率は92.3%(生体腎移植)と68.0%(献腎移植)であった(日本臨床腎移植学会雑誌4:301-312,2016).さらに同委員会から,ABO血液型不適合腎移植の成績(生存率,生着率,移植後感染合併症)に関して,ABO血液型適合腎移植と比べて全く遜色ないことが報告されている(Hattori M,et al:Transplantation 102:1934-1942,2018).

 2002年以降の免疫抑制療法は,ヒトIL-2受容体

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