診療支援
治療

膜性増殖性糸球体腎炎
membranoproliferative glomerulonephritis(MPGN)
澤井俊宏
(滋賀医科大学小児科学・講師)

●病態

・メサンギウム細胞・基質の増加,糸球体係蹄の肥厚と二重化を病理組織学的な特徴とする慢性糸球体腎炎症候群である.

・無症候性の血尿・蛋白尿で発見されるものから,ネフローゼ症候群や腎機能低下を合併するものまで多様な臨床像がみられる.

・特発性MPGNは小児例・若年者に多く,中高年者では自己免疫疾患やB型・C型肝炎ウイルス,ヒトパルボウイルスB19などの感染症が関与する二次性MPGNが多い.

・血液検査では低補体血症(C3低値,CH50低値)が特徴的で,約半数の症例で低補体血症が持続する.

・従来は電顕所見による高電子密度沈着物の部位によりMPGN Ⅰ型,Ⅱ型,Ⅲ型と分類されてきたが,蛍光抗体法でC3および免疫グロブリンが沈着する免疫複合体惹起型糸球体腎炎と,C3のみが沈着するC3腎症に分類する概念が提唱された.

●治療方針

 まず,MPGNの原因となる病態を十分に検索する.自己免疫疾患や感染症に起因するMPGNでは,原疾患の治療で改善する可能性がある.また,B型・C型肝炎ウイルス感染症が原因である場合は,ステロイドなどの治療によって原疾患を悪化させる危険がある.

 ほかの糸球体疾患と同様,軽度の蛋白尿,血清クレアチニン正常,正常血圧は腎機能予後がよいことを示唆し,経過観察またはレニン・アンジオテンシン(RAS)阻害薬で治療する.一方,ネフローゼ症候群を呈する蛋白尿,血清クレアチニン上昇,高血圧,腎病理組織所見での半月体形成や尿細管間質の炎症は,腎機能予後不良を示唆するため,ステロイド単独療法の適応となる.腎機能低下が急速に進行する場合は,ステロイド大量療法を選択する.

A.RAS阻害薬

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

➊ロンゲス錠(5mg)または粉砕 1回0.1~0.4mg/kg(最大量1日20mg) 1日1回

➋ディオバン錠(20mg)または粉砕 1回1.3mg/kg(最大量1日4

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