診療支援
治療

溶血性尿毒症症候群
hemolytic uremic syndrome(HUS)
伊藤秀一
(横浜市立大学大学院発生成育小児医療学・主任教授)

●病態

・志賀毒素産生性大腸菌(STEC)の産生する志賀毒素は,リポソームの蛋白質合成を阻害し細胞死をもたらす.毒素による血管内皮細胞障害により血栓性微小血管障害症(微小血管性溶血性貧血,消費性血小板減少,微小血管内血小板血栓が3主徴)を生じる.

・小児溶血性尿毒症症候群(HUS)の90%はSTEC-HUSであり,血清型はO157が50~60%を占め,O26が20~25%である.感染者の2~20%がHUSを発症し,低年齢児,高齢者に多い.

・補体制御因子の異常による非典型HUS(aHUS)は稀少疾患である.H因子,I因子,C3,B因子,トロンボモジュリン,MCPなどの遺伝子変異,抗H因子抗体などが原因であるが,約1/3は原因遺伝子が特定できない.乳児発症,家族歴,再発例などは積極的に疑う.

・STEC-HUS,aHUSともに三主徴で診断する.①溶血性貧血(破砕状赤血球を伴い<Hb 10g/dL),②血小板減少(<15万/μL),③急性腎障害(血清Cr値が年齢・性別基準値の1.5倍以上).参考所見は中枢神経(意識障害,けいれんなど),消化管(下痢,血便,腹痛など),心臓(心不全),膵炎など.血栓性血小板減少性紫斑病(TTP:thrombotic thrombocytopenic purpura)は鑑別すべき.

・STEC感染は分離培養,便志賀毒素・O157抗原,血清O157LPS抗体,志賀毒素の遺伝子検査で証明する.

●治療方針

 STEC-HUSに対する治療は,輸液,輸血,透析を含む急性腎障害の治療,呼吸循環の維持,脳症の治療などの支持療法が中心である.

 STEC感染からHUSへの移行を早期に示唆する指標は,LDH上昇と血小板減少である.12歳までの血清Crのおよその正常値は,身長(m)×0.3(mg/dL)である.

A.STEC感染症,早期HUSへの治療

 抗菌薬によるHUSの発症予防効果

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