治療のポイント
・急性に出現した意識障害が持続する場合に急性脳炎・脳症を考える.
・診断(脳炎あるいは脳症など)・病因が確定するまでは幅広い想定で治療を開始する.
・髄液一般検査(細胞数,蛋白濃度など)のみでは診断・病因確定は困難で,ウイルスDNAや抗神経抗体などの検査が必要である.
・病因に応じた治療が予後を改善する.
●病態
・急性脳炎は脳の炎症病態で,急性脳症は炎症のない浮腫を主体とした病態とされているが,脳組織の病理所見不明例が多く,脳炎・脳症の鑑別は難しい.
・急性脳炎にはウイルスなどの病原体の直接的な脳実質内侵達による一次性脳炎と,侵達のない免疫応答による二次性脳炎がある.
・英国の0~87歳の203例の脳炎疫学データでは,42%が一次性を主体とする感染性,37%が病因不明,21%が免疫介在性であったと報告されている.
●治療方針
急性脳炎の治療は,脳炎か脳症か鑑別不明の発病初期,脳炎ウイルス検査結果が判明する急性期,抗神経抗体などの免疫病態が判明する時期に分けて考える.
A.脳炎か脳症か不明の発病初期
可能な検査を行い,一般検査で鑑別できる一次性脳炎と急性脳症の一部を除外したうえで,幅広い想定で治療を開始する.
Px処方例 ➊に➋➌を併用する.かつ免疫修飾治療として➍メチルプレドニゾロンパルス療法を行う.
➊ゾビラックス薬注 1回15mg/kg 1時間以上かけて点滴静注 8時間ごと〔最大量1,000mg/回(3か月~15歳)〕
〔抗菌薬(生後1~15歳)〕
(免疫修飾治療として)
➍メチルプレドニゾロンパルス療法:ソル・メドロール薬注 1日30mg/kg 1~2時間かけて 点滴静注
B.脳炎ウイルス検査が判明する急性期
脳炎発病初期の治療を
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