●病態
・脳症症状を含む多症候性を示す中枢神経系脱髄性疾患である.ウイルス感染や予防接種後に一定の期間を経て発症し,脳脊髄液や脳組織からウイルスが分離されないため,自己免疫機序により発症すると考えられている.
●治療方針
前向き臨床試験は行われておらず,標準的な治療はない.しかし,その病態から一般的に副腎皮質ステロイド,免疫グロブリン大量療法,血液浄化療法などが使用され有効である.治療はできる限り早期に開始し,感染性脳炎・脊髄炎が否定できない場合はそれらに対する治療(抗菌薬やアシクロビル)を併用する.
A.薬物治療
1.ステロイド
使用されるステロイドの種類や量,投与方法はさまざまであるが,メチルプレドニゾロン大量点滴静注を治療反応性に応じて繰り返す治療法(パルス療法)が最も広く用いられる.ステロイドパルス療法の後療法として経口ステロイドを4~6週かけて漸減する.3週以内の急速なステロイド減量は再発の頻度を増加させる可能性があり,特に抗MOG(myelin oligodendrocyte glycoprotein)抗体陽性例では注意を要する.
Px処方例 下記➊を用い,終了後に➋を用いる.
➊ソル・メドロール注 1日10~30mg/kg(最大1g) 点滴静注 3~5日間投与または3日間投与を1クールとして2~3クール投与
血栓形成予防のため,ヘパリンナトリウム薬注 1日100~150単位/kg 持続点滴静注を併用する(ソル・メドロール薬注投与終了翌日まで)
➋プレドニゾロン薬散 1日1mg/kg(成分量として) 1日1~3回に分けて
2.免疫グロブリン大量療法
ステロイド不応時の追加療法として,または感染性脳炎・脊髄炎が否定的できない場合や重症例では,初回のステロイドパルス療法から併用する.1~2g/kgの単回投与または同量を3~5日に分割投与で行う(保険適用外).
Px処方例
献血ベニロン-
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