●病態
・明らかな感染徴候がないのに繰り返す腹痛の大部分は機能性消化管障害(FGIDs:functional gastrointestinal disease)と考えられ,年少児によくみられる反復性腹痛(RAP:recurrent abdominal pain)と思春期以降に多い過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)がある.
・機能性消化管障害の病態は不明であるが,内臓神経の過敏性により健常人に比べて「痛み」を感じやすくなっているとされ,精神的なストレスは,小腸や大腸運動に影響を与えセロトニン神経系が関与し「脳腸相関」といわれる.
・2006年RomeⅢ基準で新生児・幼児(4歳未満)と小児・思春期(4~18歳)に分類された.
・4歳未満は乳児疝痛,機能性下痢症,年少期はRAP,9~12歳以降は成人と同様に便通異常が便秘型・下痢型など,13~14歳の思春期前期には症状は成人と同様となり,ガス症状を主訴とするタイプが加わる.
A.反復性腹痛(RAP)
「日常生活に影響するほどの反復性発作性腹痛のエピソードが,少なくとも3か月以上にわたり3回以上独立して認められるもの」と定義されている.約半数は自然に軽快し,残りの25%は不変,25%がIBSへ移行する.
B.過敏性腸症候群(IBS)
大腸を中心とした消化管機能異常により,排便に伴う腹痛・腹部不快感・下痢・便秘などの便通異常を慢性的に訴える症候群である.排便パターンにより,①便秘型,②下痢型,③下痢・便秘混合型,④その他の4群に分類される.IBSの頻度はきわめて高く,思春期年齢以上のおよそ5~10人に1人の割合でみられる.男性より女性のほうが多い.
腹痛は,腹部全体から左下腹部,心窩部などさまざまである.腹痛や腹部不快感は排便により軽快する.嘔気,食欲不振を伴うこともある.理学的所見では,腹部圧痛,腸雑音の