診療支援
治療

円形脱毛症,抜毛癖
alopecia areata trichotillomania
天羽康之
(北里大学皮膚科学・主任教授)

Ⅰ.円形脱毛症

●病態

・自己免疫異常によると考えられている後天性の脱毛症である.頭部に円形から不整形の脱毛巣が単発する単発型,または多発する多発型が多い.

・脱毛早期の病巣では,切断毛や毛包内に黒点を認める.進行して頭髪のほとんどが脱落するものは全頭型,頭髪のみならず全身の体毛が抜けるものは汎発型,後頭から側頭部の生え際に沿って帯状に脱毛するものは蛇行型とよばれる.多くは30歳までに罹患し,20歳代の症例が33.2%と最も多く,10歳代が15.1%である.

・円形脱毛症には橋本病に代表される甲状腺疾患,尋常性白斑などの自己免疫性疾患が合併することが知られている.

●治療方針

 単発型の円形脱毛症は数か月ほどで自然治癒することもあるが,その他の病型は難治で再発を繰り返す症例が多い.「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」ではsquaric acid dibutylester(SADBE)ないしdiphenylcyclopropenone(DPCP)を塗布することによって感作し,1~2週後に薄い濃度から塗布をはじめ,紅斑および発毛がみられるまで濃度を上げていく局所免疫療法が,年齢を問わずS2(頭部全体の面積に占める脱毛巣面積の割合が25~49%)以上の多発型,全頭型や汎発型の症例に第1選択として勧められている.本治療は接触皮膚炎を誘発し,保険適用外であることから,小児では家族への十分な説明と同意のうえで治療を行う.

 ほかには液体窒素による冷却療法,抗ヒスタミン薬,セファランチン,グリチルリチン・グリシン・メチオニン配合錠の内服療法,カルプロニウム塩化物水和物やステロイド外用薬(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)の外用療法も行われる.ステロイド内服療法や点滴静注ステロイドパルス療法の小児例への施行は再発例が多く,副作用の発現も危惧されることから推奨されてない.ま

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