診療支援
治療

斜視
strabismus
横山 連
(大阪市立総合医療センター小児眼科・主任部長)

治療のポイント

・斜視の治療は原則として外眼筋の手術である.

・調節性内斜視は眼鏡だけで治療し,手術は禁忌である.

・小児の斜視は一般に両眼視機能の障害を生じ,発症から数年以上経過すると,眼位を矯正しても両眼視は回復しない.

・間欠性外斜視は,近見時に正常な両眼視を維持するので,手術を急ぐ必要はない.

●病態

・両眼の視線が違う方向を向いている状態をいう.斜視があると両眼視ができない.放置すれば両眼視機能は回復不可能になり,眼位を矯正しても正常化しない.

・斜視は,共同斜視(非麻痺性斜視)と麻痺性斜視に大別される.共同斜視は,脳神経麻痺や眼筋麻痺を伴わず,片眼ずつの眼球運動は正常なので,どの方向を見ても斜視角は同じである.麻痺性斜視は,向きによって斜視角が変化し,麻痺筋の方向を向いたときにずれが最大となる.

・小児の斜視の特徴は,複視を自覚しないことである.子どもは両眼視が発達途上にあるため,抑制と異常対応によって斜視の状態に適応し,複視が生じなくなるからである.

●治療方針

 斜視は手術で治療する場合と,眼鏡で矯正する場合とがある.手術は,外眼筋の後転(弱化)と短縮(強化)を組み合わせて行う.例えば内斜視であれば内直筋後転と外直筋短縮,外斜視であれば外直筋後転と内直筋短縮である.内斜視は特に遠視との関連が強いので,少しでも遠視があればまず眼鏡を処方する.

A.非調節性内斜視

 生後6か月以内に発症する乳児内斜視と,それ以降に生じる後天性内斜視がある.眼位異常に対しては手術を行う.特に乳児内斜視に対してはできるだけ早期の手術治療が望ましい.片眼前後転(内直筋後転と外直筋短縮)あるいは両眼内直筋後転を行う.遠視があれば手術前に眼鏡を処方する.

B.調節性内斜視

 調節すると,それに応じて一定量の調節性輻輳が起こる.見る距離に応じて眼位を変える生理的現象である.遠視があると,それを打ち消すために過度に調節

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?