頻度 あまりみない
ニュートピックス
・トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー患者を対象に認可されているパチシランには,infusion reaction予防の前処置や3週ごとの点滴が必要という欠点がある.この点を改善するため,新たなドラッグデリバリーシステムを用いることによって3か月ごとの皮下注射が可能で前投薬が不要なvutrisiranが承認申請中である.
治療のポイント
・遺伝歴が不明な孤発例も多いことに留意し,末梢神経生検や遺伝子検査による確実な診断を早期に下す必要がある.
・原因治療として,アミロイド沈着を引き起こす変異型トランスサイレチン生成に対するsiRNA治療が2019年に承認された.
・トランスサイレチン(TTR)変異がない野生型では,タファミジスメグルミン投与によりTTRの単離を阻害してアミロイド生成を抑制する.
◆病態と診断
A病態
・甲状腺ホルモン(チロキシン)とビタミンAの担体であるトランスサイレチン(TTR:transthyretin)は肝臓で合成され,生体内では4量体で存在する.その一部は常に単量体に遊離し,新たに4量体を形成し平衡状態を保っている.
・単量体のTTRは組織内に沈着しアミロイドを形成して症状を引き起こす.変異TTRや高齢者のTTR(特に高齢男性では変異TTRでなくても単離しやすい)は単離しやすく,重合するとアミロイドを形成する.
・アミロイド蛋白が末梢神経に沈着して,無髄線維→小径有髄線維→大径有髄線維の順に障害し小径線維ニューロパチーの臨床像を示す.
・TTR以外の蛋白異常から生じるものもあり,手根管症候群や下部脳神経障害などで発症する.
・腎臓,心臓,内分泌,外分泌臓器にも沈着する.
B診断
・アミロイドの組織内沈着の証明.症状のある臓器以外にも腹壁脂肪織や直腸粘膜などの生検検体で,コンゴーレッド染色や偏光顕微鏡観察でアミロイドを検出する
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