今日の診療
治療指針

視床痛(中枢性疼痛)
thalamic pain(central pain)
古谷博和
(高知大学特任教授・脳神経内科学)

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治療のポイント

・視床痛とは,視床を含む脳血管障害発症後,早期から数か月後にかけて障害の反対側に起こる中枢性疼痛で,中枢性脳卒中後疼痛(CPSP)ともよばれる.

・通常内服薬による内科的治療が試みられるが,薬物無効例も多く,反復性経頭蓋磁気刺激や外科的治療である大脳皮質電気刺激,脊髄電気刺激療法などが行われることもある.

◆病態と診断

A病態

・中枢性脳卒中後疼痛(CPSP:central post stroke pain)は神経障害性疼痛(neuropathic pain)のなかで中枢性疼痛(central pain)に相当するもので,患者の痛みが末梢神経性でないことを確認する必要がある.

中枢性疼痛脳卒中以外に,多発性硬化症,視神経脊髄炎などでも起こる.

・疼痛の生じる病態メカニズムは明らかでなく,中枢神経系の脱抑制,脱感作,異常伝導,NaチャンネルやNMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体の機能変化などにより,視床に異常興奮が生じることが原因と考えられている.

B診断

・視床痛はCPSPの約半数を占め,その診断には頭部CT/MRI検査や脳血流SPECT検査など,神経画像検査による病変の確認が必要である.

・疼痛は温痛覚障害のある部位に出現することが多い.

・耐え難い痛みが中核症状で,通常痛みとして認識されない程度の接触や軽微な圧迫,寒冷などの刺激が痛みとして認識される異痛症(アロディニア,allodynia)がしばしば起こる.

・痛みの性状としては焼けるような痛み(灼熱痛),刺すような痛み,電気が走るような痛み(電撃痛)などと表現され,ストレスや寒冷曝露などで悪化する傾向がある.

・異痛症のため,患者はしばしば手袋などで疼痛部位を保護したり,神経学的診察自体を拒否することも多い.

◆治療方針

 視床痛をはじめとするCPSPは難治性のことが多く,消炎鎮痛薬は無効で

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