今日の診療
治療指針

性感染症(尿道炎)
sexually transmitted infections(STI)and urethritis
澤村正之
(智嵩会新宿さくらクリニック・院長(東京))

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GL性感染症 診断・治療ガイドライン2020

治療のポイント

・性病予防法時代の偏見によって患者の人間関係や社会的な立場に悪影響が生じている.性感染症(STI)患者の診療にあたっては患者のトータルダメージを最小限にするよう配慮が必要である.

・アジスロマイシンは白血球に貪食されて感染組織に分配される特殊な体内動態のために,効果に個人差がある.また,単回投与によって自覚症状が改善すると再診率が下がり,その後の検査にも影響するおそれもあるので使用には十分な注意が必要である.

・近年STIは細菌感染症ばかりではなく,性器ヘルペス,尖圭コンジローマといったウイルス感染症も多く発生し,それぞれの合併により複雑化しているが,治療方法や予防方法も確立されているので,患者を無駄に怖がらせないことが肝要である.医師の不適切な言動で離婚の原因を作ったり,自殺を企てた例もあるので,患者への声かけは慎重であるべきである.

・尿道炎では初期治療が治療の成否を分けるが,初診時には原因菌の特定は困難なこともあるので,分泌物の性状によって原因菌を推測して初期治療に当たる.

・STIは自覚症状が改善しても完治していないことが多い.混合感染,耐性菌,咽頭感染も増加しているので,自覚症状が改善しても再診させる指導がきわめて重要である.

◆病態と診断

A病態

・口腔も含めた性的接触ののち,数日から数週間で排尿時の痛み,違和感,不快感で発症することが多く,典型的には尿道先端に分泌物がみられる.

・感染時期や感染源が特定できない,または隠そうとする患者も多いが,丁寧な問診でパートナーの感染が疑われる場合はカップル同時治療が必要である.

B診断

・尿道先端に出てくる分泌物の性状によって原因菌を予測する.診察する2時間前から排尿を禁止したうえで尿道口を広げて粘膜面にスライドグラスを接触させる.尿道分泌物が少なくて,肉眼での判別が難

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