今日の診療
治療指針

腎移植患者のケア(術後観察中に起こる合併症への対策)
post-operative care and treatment for kidney transplantation
高木敏男
(東京女子医科大学教授・泌尿器科学)

 腎移植後注意すべき合併症に,拒絶反応,感染症,悪性腫瘍がある.それぞれの合併症に対する対処法について解説する.

A拒絶反応

1.術後の免疫抑制薬

 標準的な術後免疫抑制薬は,カルシニューリン阻害薬,ステロイド,代謝拮抗薬である.

a.カルシニューリン阻害薬

 タクロリムスとシクロスポリンがあるが,当科での標準的薬剤はタクロリムス(グラセプターまたはプログラフ)である.

Px処方例

 タクロリムス(グラセプターまたはプログラフ)カプセル 術前に1回0.1mg/kg 1日1回で開始.その後,トラフ値を参考にして用量調整,術後1か月以内は8~12ng/mL,3か月以内は7~9ng/mL,その後は4~6ng/mL

 アレルギーなどの理由でタクロリムスを内服できない場合は,シクロスポリンを使用している.

注意 カルシニューリン阻害薬そのものの副作用として腎障害をきたすことがあるので,適正量の投与が重要である.

注意 カルシニューリン阻害薬はCYP3A4で代謝されることから,その阻害作用を有する薬剤や飲食物との併用に注意が必要である.

b.ステロイド薬

Px処方例

 メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム注 1回500mg 1日1回 点滴静注より開始.術後2週間で4mg/日の投与となるように漸減.糖尿病など,ステロイド薬に対する調整が必要な場合は,適宜減量

c.代謝拮抗薬

 標準的にはミコフェノール酸モフェチルを使用している.

Px処方例

 ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)カプセル 体重により術前1回1g 1日2回から開始し2週間で1.5g/日あるいは1g/日に,4週間で1g/日に減量し,その後継続投与する.下痢症状が強い,骨髄抑制などがある場合は,適宜減量

 また,腎移植後の妊娠企図など,ミコフェノール酸モフェチルが使用困難な場合は,アザチオプリンなどのほかの薬剤に変更する.

d.モニタリング

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