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ニュートピックス
・原因不明の失神や再発性失神は失神全体の半数ともいわれており,診断に苦労することも少なくない.「2022年改訂版不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」において,植込み型ループレコーダがクラスⅠbで推奨されており新しいアプローチ方法として期待されている.
治療のポイント
・すべての失神患者において心原性失神を念頭におき,除外するよう心がける.
・異所性妊娠や消化管出血に代表される出血による起立性低血圧を見逃さない.
・大動脈解離,肺血栓塞栓症,くも膜下出血などの致死的疾患がまれに失神の原因となることがある.
◆病態と診断
A病態
・失神は全脳の一過性低灌流による短時間の意識消失を指す(図).それにより体位の維持ができなくなることが多い.
・脳の一過性低灌流であるため,意識消失は短時間(多くは30秒程度)かつ,完全に回復する点が特徴である.
・意識消失が長い場合は失神ではなく意識障害として診察を進める必要があり,意識の完全回復まで時間がかかる場合はてんかんなども鑑別疾患として考慮する.
・ただし高齢者の場合は,失神であっても意識の回復に時間がかかる場合がある.
・失神には心拍出量の低下と末梢血管抵抗の低下の双方もしくはいずれかが関与していることが多い.
B診断
・失神の原因としては,反射性失神が最も多く,心原性失神と起立性低血圧がそれに次ぐ.
・失神をきたした患者の多くは受診時にすでに症状が消失していることが多い.そのため,患者本人や周囲の目撃者からの病歴聴取が診断に重要な鍵となる.
・特に予後の悪い心原性失神を見逃さないようにする.
・心原性失神の評価には,病歴聴取に加えて身体所見と心電図が欠かせない.
1.心原性失神の診断
・労作中の失神あるいは仰臥時の失神,失神時の動悸などの病歴は心原性を示唆する.
・身体所見においては,大動脈弁狭窄症を示唆する収縮時駆出性雑音を見逃さな