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治療

ビタミンB1欠乏症(脚気心を含む)
vitamin B1 deficiency(including beriberi heart)
垣花泰之
(鹿児島大学大学院教授・救急・集中治療医学)

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ニュートピックス

・脚気心に対するビタミンB1 製剤(フルスルチアミン)投与開始により,2次性肺水腫が惹起されることがある.全身浮腫や血管拡張の急速な改善に伴い,循環血液量の増加と相対的な後負荷上昇がその原因である.ビタミンB1 治療開始から数日間は発症に注意する.利尿薬使用時にはビタミンB1 併用が望ましい.

治療のポイント

・ビタミンB1 欠乏症は臨床症状,身体所見,病歴から疑う.

・ビタミンB1 欠乏症はアルコール依存症,心不全患者,妊婦,高齢者などに多くみられる.

・ビタミンB1 欠乏症の代表的症状は,脚気心(wet beriberi),ウェルニッケ脳症(WE:Wernicke encephalopathy),乳酸アシドーシス,末梢神経障害(dry beriberi)である.

・ビタミンB1 欠乏症の可能性が少しでもあれば躊躇せずビタミンB1 製剤投与を行う.

◆病態と診断

A病態

・ビタミンB1 は必要不可欠な補酵素であるが,補給がないと2~3週間で枯渇する.

・ビタミンB1 欠乏症は,アルコール依存症,心不全,妊婦,高齢者に多く発症するが,糖質の高い食事やスポーツ飲料を多飲する若者,夏期の肉体労働者にも発症する.

・ビタミンB1 欠乏症の発症因子として①栄養不良,②アルコール依存,③透析,④高カロリー輸液,⑤代謝亢進(甲状腺機能亢進など)との関連が注目されている.

・ビタミンB1 欠乏症の初期症状(疲労,易刺激性,記憶力の低下,睡眠障害,前胸部痛,食欲不振,および腹部不快感)は非特異的であるため初診時に診断されず,治療介入が遅れると心機能低下(脚気心)や脳症(WE)を発症する.

・脚気心の病態は,血管拡張,高拍出性心不全,肺高血圧症,右心不全,末梢性浮腫であるが,劇症型(衝心脚気)では,高度の両心機能不全,心原性ショックを呈する.

・脚気心ではビタミンB1 製剤投与が浮腫や血

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