頻度 あまりみない
治療のポイント
・中毒患者のおよそ8割に不整脈が出現し,致死性不整脈から死に至る場合がある.
・山菜や自殺目的の植物摂取,漢方摂取歴などの確認が診断に際し重要である.
・解毒拮抗薬はなく,対症療法および全身管理を行う.
・心電図の持続モニタリングを行い,重症の場合は機械的補助循環(体外式膜型人工肺VA-ECMO:veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation)を考慮する.
◆病態と診断
A病態
・トリカブトはキンポウゲ科トリカブト属の多年草で,毒性の高いアコニチン類を全草に含有する(根>茎>葉の順に含有量が多い).
・若芽の時期は食用山菜と類似するため,4~5月に誤食による中毒例が散見される.
・アコニチン類は細胞のNaチャネルの不活化を抑制し中毒症状を発現する.
・アコニチン類は摂取すると消化管からすみやかに吸収され,数時間以内に神経症状(口唇・手足のしびれ,脱力),循環器症状(不整脈,動悸,血圧低下),消化器症状(嘔気・嘔吐,腹痛,下痢)が出現する.
・血中半減期は3~16時間とされ,1~3日でほとんどが血中から消失する.
B診断
・山菜・漢方などの摂取歴聴取が最も重要である.ニリンソウやモミジガサとの誤食,採取した山菜へのトリカブトの混入,アコニチン含有漢方や自殺目的に入手したトリカブト末の摂取などが考えられる.
・機器分析で血中もしくは尿中のアコニチンが検出されれば確定診断となるが,時間を要するため臨床では有用でない.
・循環器疾患として説明不能な不整脈を呈する場合もトリカブト中毒を鑑別に挙げる.
◆治療方針
特異的解毒薬はなく,全身管理と吸収阻害を行う.初期対応として基本的な胃洗浄・活性炭投与を行う(→,「急性中毒治療の原則」の項参照).致死性不整脈から急激に心肺停止へ至る可能性があるため,迅速にVA-ECMOが導入可能な体制