頻度 あまりみない
治療のポイント
・輸入例が多く,帰国者の発熱では鑑別に挙げる必要がある.
・特に南アジアを中心にキノロン耐性株が増加しており,その場合にはアジスロマイシンなどによる治療が検討される.
・治療後も再発や保菌者となりうる.
◆病態と診断
A病態
・腸チフスはチフス菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi),パラチフスはパラチフスA菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Paratyphi A)による感染症である.パラチフスは腸チフスと比較して軽症である.
・経口感染が主な感染様式であり,東南アジアやインド,アフリカ,中南米での有病率が高い.
・リンパ行性に血中に入り,網内系で増殖し,敗血症に至る.第1病期は,1~2週間の潜伏期ののち,菌血症による発熱,嘔気のほか,古典的3徴候(比較的徐脈,バラ疹,脾腫)が知られている.ただし,3徴の出現頻度は低下傾向であり30~50%程度である.第2病期は40℃台の稽留熱を認め,下痢または便秘など消化器症状がみられ,重症例ではまれに意識障害をも呈する.第3病期は,発熱は弛張熱となる.消化管粘膜潰瘍性病変の形成に伴い1~3%の患者で腸管出血や腸管穿孔がみられる.第4病期では解熱し回復に向かう.
・特に腸管出血や腸管穿孔などの重篤な合併症をきたした場合の死亡率は数十%に達する.
B診断
・診断は病原体の分離同定が基本である.血流感染後に胆汁を介して腸管から排菌されるため,血液培養は発症後2週間以内,腸液・便培養は発症後3週間以降で有用である.骨髄液は菌量が多く,発症後2週間以内でほかの培養が陰性の場合に採取が検討される.その他,尿,胆汁,バラ疹からの培養検査で菌が検出されることがある.
・Widal反応(抗体価)はほかの菌との交差反応により感