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治療のポイント
・A群溶血性レンサ球菌は,上気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌としてよくみられるグラム陽性球菌である.
・急速に進行して致死的な経過をたどる劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS:streptococcal toxic shock syndrome)には注意が必要である.
◆病態と診断
A病態
・Streptococcus pyogenesは,Lancefieldの血清型でA群に分類され,血液寒天培地上でβ溶血(完全溶血)を起こすので,A群β溶血性レンサ球菌とよばれる.本菌を溶連菌または化膿レンサ球菌とすることが多いので,本項ではS. pyogenes感染症をA群溶血性レンサ球菌感染症として記述する.A群溶血性レンサ球菌感染症は菌の侵入部位や組織によって多様な臨床症状を引き起こす.急性咽頭炎のほか,膿痂疹,蜂巣織炎,あるいは特殊な病型として猩紅熱がある.また,中耳炎,肺炎,化膿性関節炎,骨髄炎ならびに髄膜炎などを起こすことが知られている.
・急性咽頭炎は,突然の発熱と全身倦怠感,咽頭痛によって発症し,時に悪心・嘔吐を伴う.咽頭壁は浮腫状で扁桃は浸出を伴い,軟口蓋の小点状出血あるいはイチゴ舌がみられる.A群溶血性レンサ球菌の産生する毒素に免疫がない場合は,猩紅熱に進展する場合がある.点状紅斑様,日焼け様の皮疹が出現し,回復期には落屑も認める.
・劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)は,1987年に米国で最初(国内は1992年)に報告された死亡率のきわめて高い疾患である.四肢の疼痛・腫脹・発熱・血圧低下などの初期症状ののち,急激に病状が進行し,急性腎不全や多臓器不全などを起こしショックから死に至る.病態には病原菌そのものの感染に加え,産生する毒素が大きく関与している.高齢者,糖尿病,肝疾患,腎疾患,担癌患者ならびにステロイドや免疫抑制薬の投与がハイリスクと