頻度 ときどきみる
Ⅰ.イヌ咬傷
治療のポイント
・イヌ咬傷はネコ咬傷に比べて範囲が広いが,深い傷ではない.しかし,受傷者本人の皮膚にも常在する黄色ブドウ球菌やレンサ球菌が,挫滅した創面に感染を惹起することがある.
・イヌ口腔由来の病原菌はカプノサイトファーガ(Capnocytophaga canimorsus)やパスツレラ(Pasteurella multocida),嫌気性菌が重要であり,適切な抗菌薬治療と注意深い経過観察を必要とする.
◆病態と診断
A病態
・C. canimorsusによる感染症は局所化膿巣,あるいは蜂窩織炎から指趾壊疽へと進展し,切断を要することもある.時に菌血症から敗血症性ショック,あるいは電撃性紫斑病へと進展し,髄膜炎や心内膜炎を合併し,致死的となる事例がある.糖尿病,大酒家,肝硬変,血液透析中の患者のみならず,健康成人においても注意を要する.
B診断
・Capnocytophagaは細菌培養で生えにくく,同定までに2週間程度を要することもあるため,イヌ咬傷という病歴が本菌を想起するに際し重要である.
◆治療方針
上記の菌に加え,イヌ口腔内嫌気性菌が関与することがあるが,ヒト嫌気性菌と異なり,βラクタマーゼ産生が顕著でなく,ペニシリンに感受性である.重症例においては混合感染を想定した強力な抗菌薬治療が必要である.
A軽症例
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
1)アモキシシリン(サワシリン薬)カプセル(250mg) 1回2カプセル 1日3回 7~10日間
2)アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン薬)配合錠250RS 1回1錠 1日3~4回 7~10日間
B中等症以上
Px処方例 下記のいずれかを用いる.