頻度 あまりみない
GL寄生虫症薬物治療の手引き-2020-改訂第10.2版
治療のポイント
・線虫性幼虫移行症の原因幼虫は時間が経過すれば死滅するが,原因幼虫に対する治療が望ましい場合がある.
・皮膚線状爬行疹や移動性皮下腫瘤を呈するものは虫体摘出を試みる.虫体摘出困難例や摘出非適応例は,アルベンダゾール投与で経過を観察する.
・動物由来回虫症はアルベンダゾール投与で治療するが,虫体摘出が必要になる場合がある.
・消化管旋尾線虫症は対症療法で経過を観察する.
Ⅰ.動物由来回虫症
◆病態と診断
A病態
・イヌ回虫とネコ回虫の幼虫移行症がよく知られており,両者を合わせてトキソカラ症という.ブタ回虫やアライグマ回虫の幼虫も動物由来回虫症の原因となる.
・ヒトは幼虫内蔵卵を偶然に経口摂取して,あるいは幼虫を保有している動物(ウシ,ニワトリなど)の肉を生や加熱不十分な状態で経口摂取して感染する.
・幼虫がヒトの腸管壁から侵入して体内を移動し,肝臓や肺(内臓移行型),眼や中枢神経に至り障害を生じる.移行先により症状はさまざまで,肺移行で咳嗽など,眼移行で視力障害,中枢神経移行でけいれんなどがみられるが,無症状例も多い.
B診断
・偶然に画像検査で結節影や浸潤影として発見されることがあり,その陰影が移動性であれば本症を含めた幼虫移行症である可能性が高くなる.
・内臓移行型では血液の好酸球増多を示すことが多く,本症を疑う手掛かりとなる.
・生あるいは加熱不十分な状態での動物肉の摂食歴があれば,本症も考える.
・切除した病巣や生検で得た組織中に虫体が確認できれば診断できるが,その確率は高くない.
・動物由来回虫症では,後述の顎口虫症や旋尾線虫症も含めて,血清抗体検査や遺伝子検査が有用な場合があるので,寄生虫学の研究機関や教育機関(例:宮崎大学医学部感染症学講座寄生虫学分野など)に相談されるとよい.
◆治療方針
有症例,末梢血好