診療支援
治療

J波症候群(ブルガダ症候群,早期再分極症候群)
J wave syndrome(Brugada syndrome,early repolarization syndrome)
中野由紀子
(広島大学大学院教授・循環器内科学)

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GL遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017年改訂版)(2018)

治療のポイント

・有症候例と無症候例の場合では治療方法が異なる.

・心室細動・心肺停止の既往のある症例は,植込み型除細動器(ICD)植込み適応となる.

・心室細動予防に有用であり,ICD植込み後に適切作動があった場合や,無症候例でハイリスクの症例ではキニジンの内服が適用となる.

◆病態と診断

A病態

・J波症候群は,ブルガダ症候群と早期再分極症候群の総称である.

・普段は無症状であるが,青壮年期に心室細動による心臓突然死を発症することがある.

・ブルガダ症候群の原因遺伝子として確実なのはSCN5Aのみであり,日本人の保有率は低いがリスクの層別化に有用である.

B診断

・Naチャネル遮断薬投与の有無によらず,通常肋間(第4肋間)あるいは高位肋間記録(第2または第3肋間)の少なくとも1つの誘導(V1 かV2)でタイプ1ブルガダ型心電図(J点またはST部分が基線から0.2mV以上上昇するcoved型ST上昇)を認めた場合,ブルガダ症候群と診断される.

・原因不明の心肺蘇生例で,器質的心疾患を有さず,12誘導心電図で下壁誘導または/かつ側壁誘導の2誘導以上に0.1mV以上のJ波上昇を伴うスラーかノッチ型の早期再分極を認める場合,早期再分極症候群と診断される.

◆治療方針

 ブルガダ症候群は,突然心肺停止や失神などの既往がある有症候性ブルガダ症候群と,健診などの心電図で発見された無症候性ブルガダ症候群で治療法が異なる.いずれの場合も心室細動を起こしやすい状況を避けるための生活指導は行う.

 生活指導としては,発熱を避けるあるいはすぐに解熱する,Kの保持(内服薬に注意したり,Kを積極的に摂取する,下痢や嘔吐に注意するなど),深酒を避ける,生活リズムを保つなどで自律神経の極端な動揺を避けるように努める.

A心肺停止・持続性心室

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