診療支援
治療

慢性胃炎(H. pylori感染胃炎を除く)
chronic gastritis other than Helicobacter pylori-associated gastritis
山道信毅
(東京大学医学部附属病院・予防医学センター長)

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治療のポイント

・ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染胃炎の鑑別を行ったうえで,その他の胃炎の診断を行う.

・根本治療は難しい場合が多く,対症的な治療が多い.

・自己免疫性胃炎は神経内分泌腫瘍や胃癌の発症リスクとなることが知られており,サーベイランスが必要であるが,現時点では明確な基準はなく,今後の課題である.

◆病態と診断

A病態

・本邦の慢性胃炎のほとんどはH. pylori感染胃炎であったが,1990年代以降,保菌率は大きく低下しており,その他の慢性胃炎の相対的な増加が予想されている.その大半を薬剤性胃炎(薬剤性消化管障害)と自己免疫性胃炎が占めており,ついで,好酸球性胃腸炎,collagenous gastritis,H. pylori以外のHelicobacter属の感染,結核・梅毒・サイトメガロウイルスなどによる慢性胃炎,PPI関連胃症,などが知られている.本項では薬剤性胃炎と自己免疫性胃炎について概説する.

1.薬剤性胃炎

・惹起する薬剤は複数存在するが,そのほとんどがアスピリンを含むNSAIDsの長期服用に伴う発症であり,①薬剤による直接的な粘膜障害(局所作用),②シクロオキシゲナーゼ(COX)-1の阻害作用による機序(全身作用),の2つの病態が考えられている.

・①は,NSAIDsと粘液中サーファクタントリン脂質との相互作用によって粘膜疎水性バリアが損なわれ,消化管上皮細胞が酸やペプシンなどに晒されることが主な作用機序である.

・②は,吸収されたNSAIDsが胃粘膜に発現するCOX-1を阻害し,粘液重炭酸関門や胃粘膜血流を阻害することが主な作用機序である.

2.自己免疫性胃炎

・抗胃壁細胞抗体がプロトンポンプと抗原抗体反応を起こし,胃底腺領域が破壊される病態であり,前庭部は保たれたまま体部から穹窿部にかけて粘膜萎縮が生じ,壁細胞の

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