診療支援
治療

機能性ディスペプシア
functional dyspepsia(FD)
春日井邦夫
(愛知医科大学教授・消化管内科)

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GL機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版)

治療のポイント

・問診・身体所見などで器質的疾患の疑いが乏しい場合は,内視鏡検査を行うことなく治療を開始する.

・治療開始後も症状の改善がない場合は,必要な検査をすみやかに行う.

・患者の話を傾聴し,共感することで良好な患者-医師関係を構築することも治療上重要なポイントである.

・1次治療は酸分泌抑制薬,アコチアミド,六君子湯のいずれかの投与を行う.

・2次治療としては抗不安薬・抗うつ薬,消化管運動機能改善薬,漢方薬を用いる.

◆病態と診断

A病態

・FDの病態は多因子が複合的に関与しており,幼少期の生育環境や遺伝的素因にストレスなどの心理社会的要因や消化管運動機能異常,内臓知覚過敏などの生理的要因が加わることで発症する.

Helicobacter pyloriH. pylori)除菌により症状が消失・改善した場合にはH. pylori関連ディスペプシアとして独立した疾患に分類する.

B診断

・「症状の原因となる器質的,全身性,代謝性疾患がないのにもかかわらず,慢性的に心窩部痛胃もたれ感などの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患」と定義される.

・国際的な機能性消化管疾患の診断基準であるRome Ⅳ基準では,つらいと感じる症状のうち,食後のもたれ感や早期飽満感を主症状とする食後愁訴症候群(PDS:postprandial distress syndrome)と,心窩部痛や心窩部灼熱感を主症状とする心窩部痛症候群(EPS:epigastric pain syndrome)に大別される.

・自己記入式質問票は,FDの症状の種類・程度を客観的に評価するうえで重要である.

・問診,身体診察,血液検査などにより器質的疾患の存在を疑う場合には,内視鏡検査やほかの画像診断を含む精密検査を行う.

・上部消化管内

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