診療支援
治療

腸結核
intestinal tuberculosis
藤谷幹浩
(旭川医科大学教授・病態代謝・消化器・血液腫瘍制御内科学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・全消化管に加え,他臓器の病変の有無や状態を考慮し,他科と診療連携のもと治療を進める.

・治療中も適切に効果・有害事象の評価を行い,すみやかに治療継続・変更を判断する.

・穿孔のおそれのある潰瘍や腸管狭窄による通過障害がある場合は,内視鏡的あるいは外科的治療を検討する.

◆病態と診断

A病態

・ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による消化管の感染症である.

・肺結核の有無により原発性と続発性に大別される.

・リンパ装置を介して感染するため,パイエル板や腸管近傍のリンパ組織に病巣を形成する.

・びらん,潰瘍を形成し,組織学的に肉芽腫を認める.リンパ装置が発達した回盲部に好発する.

B診断

・自覚症状として以下を確認する.

1)腹部症状:下痢・腹痛・血便・腸閉塞

2)全身症状:貧血・発熱・体重減少

3)胸部症状(主に肺結核を伴う場合):慢性咳嗽,喀痰

4)臨床背景としてHIV感染症,糖尿病,慢性腎不全の併存

免疫学的診断法としてクォンティフェロン,T-スポットを行う.

・消化管内視鏡検査:消化管のいずれの部位にも発生しうるため,上部・下部消化管内視鏡を行う.必要に応じて,小腸内視鏡やMRエンテログラフィーなどの小腸検査も行う.典型的な所見として,輪状・区域性潰瘍,腸管変形・萎縮瘢痕帯,回盲弁開大が認められる.生検にて,びらん,潰瘍,乾酪性肉芽腫,ラングハンス巨細胞が認められる.便培養や組織PCR法の陽性率は低い.

・胸部CT検査にて肺結核の有無を確認する.

◆治療方針

 そのほかの結核菌感染症と同様に感染症法第2類感染症に該当し,治療開始に伴いすみやかに届け出を行う.腹部症状をきたし,腸管病変を認める場合には,肺結核の標準療法に準じて抗結核薬を一定期間投与する.投与開始時は呼吸器内科と連携をとる.治療は6か月以上,時に数年以上わたることがある.無症

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