頻度 よくみる
治療のポイント
・基礎疾患・原因疾患により鉄吸収・利用に障害が起きるために生じる貧血である.
・原病の治療が最優先である.
・鉄欠乏を合併している場合は鉄の補充を行う.
・骨髄異形成症候群などの血液疾患を合併していることがあり,鑑別診断が重要となる.
◆病態と診断
A病態
・原因疾患には,悪性疾患,感染症や膠原病などの慢性炎症(ACD:anemia of chronic disease),腎疾患,肝疾患,甲状腺機能異常などの内分泌疾患,低栄養などがある.ACDが最も高頻度である.出血性貧血は含めないことが多い.
・ACDは炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-6やIL-1βが増加,肝細胞に作用し,体内の鉄動態にかかわらず,体内の鉄代謝を調節するヘプシジンが発現亢進することに起因する.ヘプシジンは通常鉄過剰の状態でマクロファージや十二指腸腸管細胞のフェロポーチン発現を抑制することで,腸管における鉄の再吸収を抑制し,網内系からの鉄再利用を抑制しているが,ACDではヘプシジンの発現亢進により,赤血球造血系への鉄の供給が滞ることで貧血が生じる.
・腎性貧血の主因は内因性エリスロポエチン(EPO:erythropoietin)の産生低下による相対的EPOの欠乏による.EPOは,赤芽球系前駆細胞やHb合成をはじめる前の赤芽球に作用して赤血球造血を亢進させる働きがある.低酸素に対する防御機構を担う転写因子に低酸素誘導因子(HIF:hypoxia-inducible factor)があり,HIF-PH(HIF-prolyl hydroxylase;HIFプロリン水酸化酵素)により発現が調節される.腎性貧血ではHIF-PH阻害薬により内在性のEPOが誘導されることで貧血が改善する.またEPO刺激により赤芽球からエリスロフェロンが分泌され,ヘプシジンの肝臓における産生が抑制される.
・肝