診療支援
治療

本態性血小板血症
essential thrombocythemia(ET)
木村文彦
(防衛医科大学校教授・血液・膠原病アレルギー)

頻度 あまりみない

GL造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版

治療のポイント

・治療の目的は血栓や出血イベントの発生抑制である.

・個々の症例の血栓リスク・出血リスクを評価して治療を行う.

◆病態と診断

A病態

・血小板増加を主とする骨髄増殖性腫瘍の1つで,慢性に経過する.

JAK2CALRMPLといったトロンボポエチンシグナル伝達系分子の遺伝子異常によって,巨核球増加・血小板産生亢進が引き起こされる.

・血小板増加による血栓症を引き起こすが,フォン・ヴィレブランド因子が欠乏して出血傾向を伴うことがある.

・一部で骨髄線維症への移行がみられる(5年1.8%,10年5.8%).

・まれに急性白血病(5年0.6%,10年1.5%)や真性多血症(5年1.0%,10年1.3%)への移行がみられる.

B診断

・主な症候は皮膚瘙痒・体重減少・発熱・盗汗・倦怠感・脾腫であるが,症状がなく血液検査で偶然みつかることも多い.

・WHOの診断基準に従って診断する(大基準すべて,あるいは大基準①~③+小基準).

・大基準:①血小板数45万/μL以上,②骨髄で巨核球が増加し,ルーズなクラスターを形成する,③他の骨髄系腫瘍の診断基準を満たさない,④JAK2CALRMPLいずれかの変異を有する.

・小基準:クローン性を示すほかのマーカーがある,あるいは反応性血小板増加ではない.

・大基準の②は骨髄生検が必要.④のうちJAK2 V617F変異検査は保険収載されている.

・前線維化期骨髄線維症を病理学的に鑑別することが重要.

◆治療方針

 年齢・JAK2変異の有無・血栓症の既往・心血管リスクファクター(喫煙,高血圧,脂質異常症,糖尿病)の有無で血栓症のリスク評価を行って治療方針を決める.

 フォン・ヴィレブランド因子活性を測定し,30%未満の場合,低用量アスピリンは出血リスクを上げるため投与せず,まず細胞減少療法から開始する.血小板

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