診療支援
治療

全身性エリテマトーデス
systemic lupus erythematosus(SLE)
藤尾圭志
(東京大学大学院教授・アレルギー・リウマチ学)

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GL全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019

治療のポイント

・臓器病変の種類や程度に応じて治療方針を決定する.

・治療法の改善により短期予後は比較的良好となっており,長期予後の改善を目指すことが重要となっている.

・長期的にはグルココルチコイドに関連する障害が影響するため,免疫抑制薬を併用しつつ可能な限りグルココルチコイドを減量する.

・自己免疫応答プロセスの持続性が高い疾患であり,再燃が多い.長期間症状が安定していても,グルココルチコイドの減量により再燃することがあり,慎重な判断が必要である.

◆病態と診断

A病態

・全身性エリテマトーデス(SLE)は,自己抗原のなかでも細胞の核に対する免疫寛容が破綻し,その結果として全身の臓器に炎症を生ずる疾患である.核抗原のなかでも,2本鎖DNAやスプライセオソームを構成するSm蛋白に対する自己抗体を産生するのが特徴である.自己抗体が形成する免疫複合体の影響として補体の低値がみられる.

・免疫細胞ではⅠ型インターフェロン経路の遺伝子発現が亢進しており,自然免疫経路の活性化が想定されている.実際にSLEの感受性遺伝子の多くは,自然免疫経路とⅠ型インターフェロン経路に存在する.Ⅰ型インターフェロン経路とB細胞経路の活性化はSLE全体でみられるが,ループス腎炎や全身の活動性を伴う症例では好中球経路の亢進がみられ,好中球が病態に関与すると考えられる.

B診断

・成人では男女比が1:9と女性に多く,20~40歳の若年女性に多く発症するが,最近では高齢発症もみられる.SLEの特定医療費受給者証の所持者数は6万人以上となっている.

・病歴と臨床所見を考慮し,検査結果や画像所見を併せて総合的に診断する.分類基準を用いた診断になるため,感染症や悪性腫瘍の除外を慎重に進める必要がある.

・発熱や関節炎などの非特異的な症状と,蝶形紅斑などの特徴的な皮膚所見

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