診療支援
治療

血管性うつ病
vascular depression(VDep)
井口保之
(東京慈恵会医科大学教授・脳神経内科)

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GL脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]

ニュートピックス

・臨床現場における判断を支援する「脳卒中治療ガイドライン2021改訂2023」(日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会 編)が公表された.

治療のポイント

・血管性うつ病は,認知・身体機能,日常生活動作を障害する要因となる.

・うつ症状に対する薬物治療,脳卒中再発予防と危険因子の管理,精神療法,患者および家族に対する多職種によるチームアプローチを進める.

・服薬アドヒアランスを良好に保つために,抗うつ薬は少量から開始し副作用に注意する.

◆病態と診断

A病態

・血管性うつ病(vascular depression)は,臨床的に明らかな脳卒中を発症したのちに出現したうつ病(脳卒中後うつ:post-stroke depression),MRIなどで偶発的に診断される無症候性脳梗塞を伴ったうつ病(MRI-defined vascular depression)を含む.

・比較的高齢で発症し,時に老年期うつ病と同様の経過をたどる.

・軽度認知機能障害が先行するタイプ,うつ症状の進行に伴い認知症が顕在化するタイプがある.

B診断

・うつ病の診断には,DSM-5-TRの診断基準を用いる.すなわち,①抑うつ気分または,②興味または喜びの喪失,のうち少なくとも1つが存在し,③体重の減少または増加,④不眠または過眠,⑤精神運動興奮または制止,⑥疲労感または気力の減退,⑦無価値感または過剰であるか不適切な罪責感,⑧思考力や集中力の減退,または決断困難,⑨死についての反復思考か自殺念慮,のうち5つがほとんど毎日かつ2週間存在する.

・うつ病のスクリーニングには高齢者うつ病評価尺度(GDS:Geriatric Depression Scale),Self-rating Depression Scale(Zung版)などの質問形式法,さら

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