診療支援
治療

脊髄腫瘍
spinal cord tumor
安原隆雄
(岡山大学大学院准教授・脳神経外科)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・脊髄腫瘍はまれな病態であるが,偶然発見される場合も増加しており,早めの専門医受診が勧められる.

・年齢や症状,腫瘍の増大スピードによっては,慎重な経過観察や内科的治療も有用である.

・腫瘍ごとに摘出方法は異なるが,神経組織を損傷しない,精緻な手術操作が必要である.

◆病態と診断

A病態

・脊髄腫瘍は,10万人に1人の疾患で,病変の主座により硬膜外腫瘍,硬膜内髄外腫瘍,髄内腫瘍に分けて考えられる.

・硬膜外腫瘍は悪性の転移性腫瘍が多く,皮質骨の骨破壊や疼痛を伴う場合が多い.

・硬膜内髄外腫瘍は,①神経鞘腫,②髄膜腫の順に多く,ほとんどが良性疾患である.

・髄内腫瘍は上衣腫,星細胞腫が多く,海綿状血管腫や血管芽腫が続く.特に星細胞腫では遺伝子診断が予後予測に重要な場合がある.

・脊髄腫瘍により脊髄や神経根が圧迫され,脊髄症や神経根症を呈する場合があるが,無症状あるいはごくわずかな症状で偶然発見される場合も増加している.

B診断

・運動/感覚障害の部位や程度,腱反射所見などの神経学的診察により,腫瘍の局在が推定される場合もあるが,無症候性の場合もある.

・単純MRI(特にT2強調画像)が最初に行われるべき検査である.

・ガドリニウムによる造影MRI(3方向)は,小さい病変の検出や腫瘍の拡がりの同定に有用である.

・椎間孔の拡大を伴うダンベル型神経鞘腫や骨破壊を伴う転移性腫瘍では,単純X線撮影や動態撮影,CTが有用である.

・血管芽腫において3D-CTAで栄養血管や腫瘍濃染を確認することは診断的価値が高い.

◆治療方針

A内科的治療

 脊髄腫瘍が発見された場合,全例が即手術になるわけではない.高齢者症例や無症候性例では,腫瘍の増大スピードや症状の変化を定期的に確認する必要がある.最初は3か月,半年,状態が落ち着いていれば,1年に1度の定期外来受診・画像評価がよい.一方で,症状が急速に

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