診療支援
治療

頸椎椎間板症
cervical disc disease
三好光太
(労働者健康安全機構横浜労災病院・副院長)

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GL頸椎症性脊髄症診療ガイドライン2020(改訂第3版)

治療のポイント

・頸椎椎間板症では四肢の神経症状はなく,頸部痛など局所症状が主となる.

・自然軽快も期待でき,保存療法が基本である.

◆病態と診断

A病態

・頸椎変性疾患の多くは加齢や退行による椎間板の変性に起因する.変性の機序は,20歳代後半以降に椎間板髄核の含水率の低下や硝子様変性が生じると,髄核や線維輪に亀裂が入り,さらに椎体軟骨終板にも亀裂や菲薄化が起こる.これらの組織変性により椎間板が変性した状態を椎間板症と称する.

・椎間板症が進行し,椎間板が膨隆,さらに線維輪が破れて髄核,線維輪や軟骨終板が脊柱管内や椎間孔へ脱出すると椎間板ヘルニアと称し,また椎間板高の減少などに伴い骨棘形成など椎体・椎間関節の変形や黄色靭帯の肥厚などが生じると頸椎症と称するが,それぞれの境界は明確ではない.

・加齢や退行が主因であるが,繰り返しの動作,外力,姿勢(脊椎アライメント)や遺伝も素因となる.

・若年者では頸椎の生理的前弯の消失(ストレートネック)や後弯に伴っている場合があり,高齢者では胸椎後弯に伴う代償性の頸椎過前弯に現れてくる場合がある.

・これらの形態変化により脊柱管内で脊髄が圧迫されて四肢に神経障害などをきたすと脊髄症,脊柱管内や椎間孔で神経根が圧迫され肩甲部を含む片側上肢に痛みや神経障害がみられると神経根症と診断する.

B診断

・椎間板症の時期は頸部痛,頸部や肩のこり,頸部の可動域制限などに限ることが多く,上肢の巧緻機能障害,歩行障害,四肢の筋力低下や感覚障害をきたすと脊髄症,肩甲部や上肢への放散痛,上肢の筋力低下や感覚障害がみられると神経根症を疑う.

・痛みやこりは頸椎の動作,姿勢や負荷などにより変動する.

単純X線では頸椎生理的前弯の消失・後弯・過前弯などのアライメント不整,椎間孔の狭小や骨棘形成がみられ,前後屈機能写では不

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