頻度 よくみる〔有病率約1%(J Phys Ther Sci 29:1510-1513,2017)〕
ニュートピックス
・プライマリ・ケアでの初期対応を誤り回復への不安が強まると,侵害受容性疼痛から不快な情動に起因する中枢性感作を伴う痛覚変調性疼痛へと移行し,線維筋痛症/慢性疲労症候群と同様の状態〔ICD-11では慢性一次性疼痛(MG30.0)〕となり難治化するリスクがある.
治療のポイント
・安心感を与える.図のIASPの治療原則の要点を基軸とする.
◆病態と診断
A病態
・①基盤は椎間関節・椎間板・筋筋膜の軽微な損傷(侵害受容性疼痛).
・②潜在的な神経根圧排があると,肩甲部の痛みおよび上肢放散痛・しびれを伴う場合がある(神経障害性疼痛).
・③発症から少し経過してからの自律神経機能不全(バレリュー症候群).
・④被害者意識や怒り感情,痛みへの破局的思考が強いと,中枢性感作,中脳辺縁系ドパミンシステムや下行性疼痛抑制系の機能異常が起こり遷延化する(痛覚変調性疼痛).
・③は,④に移行あるいは合併する.
B診断
・①痛みを伴う頸椎可動制限,圧痛.特に疼痛・可動制限が顕著な場合は,単純X線で骨傷がないことを確認する.
・②神経学的検査(特にスパーリングテスト陽性).改善が乏しい場合にMRIを考慮.
・③頭痛,頭重感,めまい,耳鳴り,眼精疲労,喉の違和感,食欲低下,吐気,息切れ,上肢しびれ,疲労感,睡眠障害などの自覚症状が複数ある.
・④痛覚過敏,腰背部痛を含む広範囲な痛み,抑うつ傾向,睡眠障害.
・身体症状症のスクリーニングツールであるSomatic Symptom Scale(SSS)-8で16点以上は,③,④の潜在を疑うのに役立つ.
・難治化の有意なリスク因子として,オッズ比が高い順に,腰痛の併存,回復への期待が低い,被害者意識が高い,②,③があげられる(PLoS One 10:e0132191,2015