診療支援
治療

頸部腫瘤
neck masses
塚原清彰
(東京医科大学主任教授・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)

頻度 よくみる

◆病態と診断

A病態

・良性と悪性に分類できる.良性疾患には反応性リンパ節腫脹,リンパ節炎,神経鞘腫,嚢胞,血管腫,血管奇形,リンパ管腫(リンパ管奇形),IgG4関連疾患,サルコイドーシス,唾液腺や甲状腺の良性腫瘍,脂肪腫などがある.悪性疾患には頭頸部癌や甲状腺癌の頸部リンパ節転移,悪性リンパ腫などがある.

B診断

・ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性中咽頭癌,甲状腺癌,唾液腺癌は20~40代での発生も少なくない.「若いから癌ではない」という考えは危険である.

・問診では病悩期間,増大傾向や疼痛の有無,咽頭痛・嚥下困難などの随伴症状を確認する.亜急性壊死性リンパ節炎では先行する感冒症状を伴うことが多い.内服中の薬剤確認も必須である.関節リウマチなどでメトトレキサート(MTX)を数年以上内服している場合,MTX関連リンパ増殖性疾患をきたすことがある.

・次に,内視鏡などを用いて,咽喉頭や口腔に炎症や腫瘍の所見があるかを確認する.この際,口腔底・歯肉の疾患も見逃さないように心がける.内視鏡を用いる場合,NBI(narrow band imaging)を併用するほうが悪性疾患の早期発見に有用である.

・そして,超音波,CT,MRIなどの画像検査を行う.リンパ節腫脹は超音波でリンパ門の有無や,扁平か円形かなどの形態観察をすることで,良悪性の推察が可能である.

・画像検査まで行うと,ある程度の疾患鑑別ができるが,画像検査で正中頸嚢胞と診断した症例の数%に穿刺吸引細胞診(FNA:fine needle aspiration)で乳頭癌の所見を認める,ワルチン腫瘍と考えたが悪性リンパ腫であったなど,画像診断のみで診断を確定することは危険である.FNAや穿刺生検(FNB:fine needle biopsy)が必要かを必ず検討する.超音波ガイド下であれば10mm以下の腫瘤でもFNAやFNBを

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?