A.急性気管支炎
急性気管支炎の原因で最も多いのはウイルス性であり,ふつう抗菌薬を必要としない.感冒と同様,喀痰が膿性に変化しても必ずしも細菌感染症を意味しない.喀痰が膿性に変化したらグラム染色を行う.ウイルス感染症に続発する細菌感染症は,S.pneumoniae,Staphylococcus aureus,H.influenzaeによることが多い.健常者のS.aureus肺炎はウイルス感染後でなければまれである.S.aureus肺炎は入院適応である.
一過性の血痰はウイルス性の急性気管支炎でよくみられる.しばらく様子をみて構わない.
1.治療
多くの場合,抗菌薬は不要である.もし用いるなら以下のように処方する.
(1)S.pneumoniae,H.influenzae,M.catarrhalisを疑うとき
(2)マイコプラズマを疑うとき
B.市中肺炎
市中肺炎は患者背景によって起因微生物が大きく異なる(表5図).
マイコプラズマ,レジオネラで,市中肺炎全体の10~25%を占める.C.burnetiiによるQ熱も決してまれでない.ウイルス肺炎も意外に多く2~15%を占めるが,ほとんどが軽症である.肺炎クラミドフィラはまれである.ニューモシスチス肺炎などHIV関連の呼吸器感染症も念頭におく.亜急性の経過(週~月単位)をとる場合は,必ず結核を考慮に入れる.
起因微生物を推定するために,患者の年齢,基礎疾患の有無,免疫能,過去の抗菌薬投与,入院歴,先行するウイルス感染の有無,周囲の同症状者,ペット飼育,旅行歴,などの問診が重要である(表5
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