市中の感染性下痢症の2大起因菌は,①キャンピロバクター,②サルモネラである.ウイルス性も多く,全体の30~40%を占める.
病型は,小腸型と大腸型に2分類される(表7図).ただし,どちらにも分類しにくい混合型も存在する.
1.発生機序による3分類
(1)毒素型:黄色ブドウ球菌,セレウス菌,ボツリヌス菌.食物に付着した細菌が食物内で増殖する過程で毒素を産生し,その毒素が消化管に入って発症する.抗菌薬は無効である.
(2)感染型:サルモネラ,キャンピロバクター,腸炎ビブリオなど.細菌が腸管に感染して症状を起こす.
(3)生体内毒素型:腸管出血性大腸菌,コレラなど.細菌が腸管内で増殖する過程で産生する毒素によって症状を起こす.
市中発症の腸管感染症では便培養を提出する.
感染性下痢はふつう数日以内に軽快する.7日以上続くときは,原虫,寄生虫,HIV,薬剤などを含めて鑑別する.
2.治療
大多数の症例の治療は,安静と水・電解質・糖の補給のみでよい.抗菌薬が必要な場合は限られる.
嘔吐がなければ経口摂取のほうがよい.ただし,状態によっては1~2Lの輸液を行うと患者が楽になることも少なくない.
国内の感染性下痢症の上位3つ,①キャンピロバクター,②非チフス・サルモネラ,③病原性大腸菌に対して,いずれも原則として抗菌薬は不要である.抗菌薬が必要な場合は,キノロン系薬かST合剤薬がよく用いられる.この2系統が選ばれる理由は,いずれも嫌気性菌に抗菌力がないか,あるいは弱いために,腸内細菌叢を乱しにくいからである(表8図).
(1)サルモネラ
非チフス・サルモネラ腸炎では基本的に抗菌薬を投与しない.抗菌薬の投与は症状や排菌期間を短縮せず,逆に保菌率(0.3~0.6%)を高めるからである.抗菌薬投与の適応は表9図の場合に限られる.
クラビット薬 1回500mg,1日1回(3~5日間),または
ロセ
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