診療支援
治療

口腔関連副作用に注意を要する薬剤・対応
山浦克典
(慶應義塾大学薬学部・教授)


はじめに


 口腔は消化管の入口であるとともに呼吸器の出入り口であり,食べる,話す,呼吸するために重要な器官である.医薬品のなかには,口腔内に種々の副作用を生じるものが多数ある.口腔関連の副作用は患者の生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼすばかりか,全身性の疾患につながるおそれがあるため,医療従事者は原因となり得る薬剤と対応方法について深い知識をもつ必要がある.本項では,口腔関連副作用として口腔乾燥症,口腔粘膜炎,口腔カンジダ症,顎骨壊死,歯肉増殖症,嚥下障害を取り上げ,注意が必要な薬剤とその対応方法について解説する.


A.口腔乾燥症


1.注意が必要な薬剤

 口腔乾燥症は,何らかの原因で唾液の分泌量が減少することによりもたらされる口腔の乾燥症状である.唾液は通常1日1~1.5L分泌される.唾液分泌はアドレナリンβ1受容体を介する“交感神経”およびムスカリンM3受容体を介する“副交感神経”の二重支配で調節され,それぞれムチンやアミラーゼなどの“蛋白質分泌”および水や各種イオンの“水分泌”を司る.唾液には粘膜保護・創傷治癒,抗菌,浄化・排泄,消化,味覚促進,潤滑・嚥下促進,緩衝・脱灰抑制などさまざまな作用がある.そのため,唾液分泌量の低下は,齲蝕や歯周病,口臭,口内炎,口腔カンジダ症などさまざまな口腔内症状を招く.副作用として口腔乾燥症を引き起こす医薬品は多数存在し,530成分を超える(表1).特に抗精神病薬や抗うつ薬などの精神神経用薬,血圧降下薬,解熱鎮痛消炎薬,催眠鎮静薬・抗不安薬,アレルギー用薬,抗パーキンソン病薬などが副作用として口腔乾燥症を引き起こすことが知られている.

2.対応方法

 1)高齢者においては,ポリファーマシー対策として原因となり得る処方を定期的に見直す.

 2)唾液分泌低下は,さまざまな口腔内症状を引き起こすため,歯科への定期受診を勧奨する.

 3)医療用医薬品の保険

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