診療支援
治療

皮脂欠乏性湿疹
Asteatotic eczema
大塚 篤司
(近畿大学主任教授)

病態

 表皮の脂質および天然保湿因子の低下に伴い皮膚が乾燥し(ドライスキン),瘙痒が出現するため搔破を繰り返すことで湿疹病変を形成する.

【病因・発症機序】皮膚の乾燥が発症のトリガーになるが,乾燥に伴う瘙痒のメカニズムに関しては不明な点も多い.表皮内へ末梢神経が侵入することが関係するとの研究報告(J Dermatol Sci 48: 103-111, 2007)と,表皮内神経の“pruning(切り取り)”の低下が原因とする研究報告(Sci Rep 9: 8625, 2019)がある.乾燥に伴う搔破によって,紅斑や搔破痕が誘導される.


診断

 高齢者の下肢伸側に好発する,粃糠疹,粗糙化,さざ波様亀裂.進行に伴い,湿疹病変を生じる.体幹,上肢に出現することも多い.

【鑑別診断で想起すべき疾患】アトピー性皮膚炎,接触皮膚炎,尋常性魚鱗癬,魚鱗癬様菌状息肉症,うっ滞性湿疹,白癬,血管炎,皮膚瘙痒症,内臓疾患に伴う皮膚瘙痒症など.

【臨床症状からの診断】乾燥に伴う細かな鱗屑とドライスキンを特徴とする.時に搔破痕やびまん性の淡い紅斑を伴う.高齢者に多く,間擦部の湿疹病変が少ないことでアトピー性皮膚炎と鑑別可能である.慢性に経過した場合,網状皮斑が出現することもあり,血管炎との鑑別が必要な場合もある(図4-15)

【必要な検査とその所見】臨床症状から診断は容易であり,特別な検査を要さないことが多い.まれに魚鱗癬様菌状息肉症などの希少疾患と誤診する場合もあり,経過が長く重度の臨床症状を呈する場合は,皮膚生検を行う.

【病理組織学的検査】最も一般的な所見は軽度の亜急性海綿状皮膚炎である.角質層はコンパクトでやや不規則である.


治療

 皮膚の乾燥が原因であるため,保湿を早めにすることで症状の増悪を防ぐことが可能である.スキンケア,皮膚刺激の原因回避などの生活指導,抗ヒスタミン薬の内服,保湿剤の外用を行う.症

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