乾癬は,尋常性乾癬,関節症性乾癬(乾癬性関節炎),膿疱性乾癬,乾癬性紅皮症などに臨床的に大別される.関節症性乾癬,膿疱性乾癬に関しては,別項を参照されたい〔→,「関節症性乾癬」の項,→,「膿疱性乾癬(汎発型)」の項参照〕.乾癬性紅皮症とは乾癬の皮疹が全身に及び,びまん性の潮紅,落屑を伴い紅皮症化した状態を指す.本項では尋常性乾癬の病態,診断,治療などを概説する.
病態
【頻度】日本人の有病率は0.2~0.3%と推測され,欧米人の約1/10の頻度である.
【発症機序】乾癬の病態形成に主要な役割を果たす細胞やサイトカインと,それらの抗体の関係を「乾癬 最近の動向」の項の図9-1図に示す(→参照).乾癬ではTh17細胞が中心的な働きをしている.ナイーブT細胞はIL-23の作用でTh17細胞に分化する.真皮樹状細胞であるTIP-DCは,Th17細胞の増殖維持に必要なIL-23を産生し,またTNF-αはTIP-DC自身の持続活性化に関与している.最近乾癬治療に用いられるようになった生物学的製剤が標的とするTNF-α,IL-23,IL-17などのサイトカインが,乾癬の病態において重要な役割を果たしていることが理解される.
診断
【臨床像】境界が明瞭で扁平にわずかに隆起した角化性紅斑局面を呈し,表面には銀白色の厚い鱗屑を付着する(図9-2)図.頭部,四肢伸側,腰臀部などに好発し,爪の変化を伴うこともある.
【鑑別診断】典型例では臨床像から診断が容易であるものの,皮膚T細胞リンパ腫,梅毒,皮膚筋炎などとの鑑別が必要な場合がある.その際は,皮膚生検で確定診断する.
【病理組織像】乾癬では不全角化を伴う角質肥厚,角層下への好中球浸潤(Munro微小膿瘍),表皮稜の下方への棍棒状延長,真皮乳頭の血管拡張と炎症細胞浸潤などを認める.
【検査】乾癬では肥満,糖尿病,高血圧,脂質異常症などのメタボリック症候群の合併
関連リンク
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