診療支援
治療

天疱瘡
Pemphigus
高橋 勇人
(慶應義塾大学准教授)

病態

 天疱瘡とは,表皮や粘膜を構成する角化細胞表面に発現するデスモグレイン(Dsg)に対する自己抗体によって,表皮内水疱形成が誘導される自己免疫性水疱性疾患である.古典的天疱瘡は,臨床型から尋常性天疱瘡(PV:pemphigus vulgaris),落葉状天疱瘡(PF:pemphigus foliaceus)に大別され,尋常性天疱瘡はさらに,粘膜優位型と粘膜皮膚型の2型に分類される.粘膜優位型の尋常性天疱瘡はIgG型抗Dsg3抗体を,粘膜皮膚型の尋常性天疱瘡は抗Dsg3 IgG抗体と抗Dsg1 IgG抗体の両方を,落葉状天疱瘡は抗Dsg1 IgG抗体をそれぞれ有することがわかっており,自己抗体のプロフィールにより臨床病型を分類することができる.また尋常性天疱瘡の亜型として,間擦部を中心に乳頭状隆起性局面を伴う増殖性天疱瘡や,落葉状天疱瘡の亜型として,蝶形紅斑様の紅斑を伴う紅斑性天疱瘡が知られている.このほかに,主にリンパ球系の腫瘍を伴い発症する腫瘍随伴性天疱瘡や疱疹状天疱瘡,薬剤性天疱瘡などがある.

【頻度】日本における天疱瘡の患者数は,平成30(2018)年度の指定難病の受給者ベースでは3,152人とされている.認定方法が変更になる前の平成28(2016)年度の調査においては5,693人であり,現在の患者も5,000~6,000人程度と推察される.40歳以降の患者数が多く,特に50,60歳代の患者が多い.平成16(2004)年度の実績では男女差は男:女=1:1.5で女性に多い.

【病因・発症機序】Dsgは,角化細胞表面に存在する細胞接着装置デスモゾームを構成する細胞接着分子である.天疱瘡ではこのDsgに対する自己抗体がDsg分子に結合し,その細胞接着能を障害する結果,角化細胞同士の接着が脆弱となり,棘融解像(角化細胞が細胞接着能を失ってバラバラになった結果生じる表皮内水疱像

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?