病態
瘙痒の強い小水疱や丘疹が慢性に繰り返し出現する自己免疫性水疱症である.1884年にLouis Duhringによって初めて報告された.欧米例では,通常グルテン過敏性腸症(セリアック病)と合併して生じる.
【頻度】欧米では10万人あたり1.2~39.2人の患者が存在すると報告されている.本邦では2020年現在の報告例は100例前後であり,まれである.
欧米,本邦いずれも男女比は,およそ2:1と男性に多く,平均発症年齢は30~40歳代である.
【病因・発症機序】①自己抗体として,IgA型抗表皮トランスグルタミナーゼ(eTG)抗体が疱疹状皮膚炎の主要な抗体であることが明らかになったが,病因は不明である.抗eTG抗体はセリアック病の患者でも陽性になる.また,セリアック病に特異的な抗組織トランスグルタミナーゼ(tTG)抗体(IgA)も疱疹状皮膚炎の患者で検出される.②遺伝学的素因として,欧米の症例ではHLA-DQ2,DQ8との相関が知られており,そのうち約80%がHLA-DQ2を有している.わが国の例での関連性についての報告はまだ少ない.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】線状IgA水疱性皮膚症,疱疹状天疱瘡.
【臨床症状】①四肢伸側に,特に肘頭や膝蓋や臀部が好発部位である.顔面や頭部,鼠径部にも生じやすい.慢性再発性の強い瘙痒感を伴った数mm大の小水疱や丘疹が集簇し紅斑とともに生じる(図10-6)図.②合併症では,セリアック病の合併が欧米例では多いが,本邦では数例のみであり,まれである.欧米では,甲状腺機能低下症や亢進症,1型糖尿病,白斑症,円形脱毛症,膠原病などのさまざまな自己免疫性疾患が合併することが報告されている.
【必要な検査とその所見】①皮膚生検(下記「病理組織学的検査」に記載)と蛍光抗体直接法が必須である.②蛍光抗体直接法にて真皮乳頭部にIgAの顆粒状ないし細線維状の沈着を特
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