診療支援
治療

閉塞性動脈硬化症
Arteriosclerosis obliterans:ASO
住田 隼一
(東京大学講師)

病態

 閉塞性動脈硬化症(ASO)は大動脈および四肢の主幹動脈の粥状硬化により,血管内腔に狭窄や閉塞をきたし,虚血症状をきたす閉塞性疾患である.多くは,下肢に症状が現れ,冷感,しびれ,疼痛,間欠性跛行などの症状を呈する.

【頻度】50歳以上の男性に多い(男性が約85%).ASOを発症する患者は,高血圧や糖尿病など動脈硬化をきたす危険因子を有している場合が多く,生活様式の西洋化や生活習慣病の増加に伴って,年々増加傾向にある.

【病因・発症機序】過剰に血中にLDLコレステロールが存在した場合,LDLが血管壁に沈着し,酸素ラジカルによる酸化が生じる.それに伴って,単球やマクロファージの血管内皮細胞への接着が起こり,酸化LDLが貪食され,泡沫細胞化し,集積した結果,プラークが形成される.その結果生じる血管内皮への傷害などから,血栓や粥状硬化が進み,壁の線維化や内腔の狭小化,閉塞が生じる.

【臨床症状】皮膚の虚血に伴う症状として,網状皮斑や潰瘍が現れることがある.また,虚血に伴い,しびれ,冷感,疼痛,間欠性跛行がそれぞれ6割以上の症例でみられ,壊疽に至る症例も2割程度ある(図13-9).本症の多くは下肢に発症する.侵される血管は大動脈が下行し分岐する部位に多くみられ,上肢に病変がみられるのは1割以下とまれである.Raynaud症状はまれであるが,糖尿病,脂質異常症,高血圧などの合併が多い.


診断

【鑑別診断】閉塞性血栓性血管炎との鑑別が重要となる.本症では,閉塞性血栓性血管炎でみられるような遊走性静脈炎はみられず,発症年齢も比較的高齢である.本疾患の症状として多い間欠性跛行は,脊椎管狭窄症,糖尿病による神経障害などでもみられることがあるため鑑別を要する.本症ではankle brachial index(ABI)の低下がみられるが,脊椎管狭窄症や糖尿病性神経障害では,ABIはほぼ正常であり,鑑別

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