診療支援
治療

クリオグロブリン血症
Cryoglobulinemia
管 析
(西日暮里駅前すが皮膚科院長)

病態

 クリオグロブリンは37℃より低い温度で凝固し,37℃以上に加温すると再び溶解する性質をもつ異常な蛋白質である.クリオグロブリンが血液中に異常に増加した状態をクリオグロブリン血症とよび,臨床的には原因不明の本態性のもの(全体の10~30%)と,血液疾患や肝疾患などを基礎疾患として生じる続発性のものに分けられる.頻度は10万人に1人程度とまれだが,重篤な症状を起こす例もあるため,皮膚科医として常に念頭におくべき疾患である.

【病因・発症機序】クリオグロブリン血症はその構成する免疫グロブリンの種類によりⅠ~Ⅲ型に分類される.Ⅰ型(10~15%)は1種類の単クローン性免疫グロブリン(IgM,IgA,IgGの順)により構成される.一方,Ⅱ型(50~60%),Ⅲ型(30~40%)は2種類の免疫グロブリンの混合からなる.Ⅱ型は多クローン性IgGと単クローン性IgMの混成であり,Ⅲ型は多クローン性IgGと多クローン性IgMの混成である.Ⅰ型はマクログロブリン血症(IgM型),多発性骨髄腫などのリンパ増殖性疾患を,Ⅱ型,Ⅲ型はC型肝炎などの感染症や関節リウマチ,全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患を基礎疾患とする.

【臨床症状】皮膚症状はクリオグロブリンの小血管内での凝集による反応として生じる.すなわち,四肢末端,下腿,耳介,鼻などの寒冷曝露部位に紫斑,網状皮斑,潰瘍,血疱を生じる(図14-6).関節痛やRaynaud現象,末梢性神経障害もしばしばみられる.全身症状は,Ⅰ型では血栓による心筋梗塞や脳梗塞,Ⅱ型,Ⅲ型ではネフローゼ症候群や膜性増殖性糸球体腎炎などがある.


診断

 事前に温めた注射シリンジで採血後,血清を分離する.採血後に検体を37℃以下に冷やすと血清を分離する際に血球とともにクリオグロブリンが沈殿してしまい,偽陰性となるので採血から分離までは37℃で行うことが重要である.分

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