診療支援
治療

ケラトアカントーマ
Keratoacanthoma
安齋 眞一
(ピーシーエルジャパン常勤医/日本医科大学非常勤講師)

病態

 後述するような病理組織学的特徴をもつ良性毛包性腫瘍で,数週間の経過で急速に増大した後,多くの場合,自然退縮する.しばしば,病変内に有棘細胞癌を生じる.

【臨床症状】高齢者の露光部に好発する病変であるが,それ以外の部位にも生じる,はじめ半球状,ドーム状に隆起した皮膚色ないし淡紅色の結節が,数週で急速に成長し,やがて中央が噴火口状に陥凹し,角化物質で満たされる.通常直径0.5~2.0cm前後となる.この時期が数週続き,次いで数週の経過で自然退縮し,あとに瘢痕を残す.


診断

 上記のような臨床経過に加えて,病理組織学的に定型像を確認する.つまり,クレーター状構築をもち,毛包峡部外毛根鞘の角化細胞に類似する,好酸性の豊富な細胞質をもつ核異型性のない腫瘍細胞が増加する.腫瘍胞巣の下層では,腫瘍細胞の核は正常の表皮基底層の角化細胞より大型化し,異型性を伴う.しばしば核分裂像もみられ,浸潤性増殖をしているかのようにみえる場合もある.早期では,胞巣下部の角化細胞の浸潤性増殖が目立ち,成熟期では好酸性の豊富な細胞質をもつ核異型性のない腫瘍細胞が主体となる.その後,クレーター状構築のみを残して,毛包漏斗部様構築のみとなる.病変の一部に,腫瘍細胞が全層性に核異型性を示す有棘細胞癌を生じることがあり,ケラトアカントーマ様有棘細胞癌とよぶ.重要な鑑別疾患は,構築は類似するが,構成成分の異なる有棘細胞癌(クレーター状有棘細胞癌:好酸性の豊富な細胞質をもつ腫瘍細胞を伴わない)と疣贅(クレーター状疣贅:尋常性疣贅と類似する構成成分からなる)である.


治療

 できるだけ病変を全摘出生検する.病変ぎりぎりの切除でよい.やむを得ない場合は部分生検でもよいが,その場合でも病変の全体構築が確認できるような検体採取が必要である.ケラトアカントーマ様有棘細胞癌の場合には,有棘細胞癌の治療に準じた治療を行う.

□患者説明のポイ

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