病態
HTLV(human T-lymphotropic virus)-1による血液腫瘍.HTLV-1が感染したT細胞が腫瘍化しATLを発症する.ATL患者の約半数に皮膚病変を認める.本邦では,九州・沖縄地方を中心としたHTLV-1流行地域に罹患者が多い.
【頻度】本邦におけるHTLV-1感染者(キャリア)は2009年の研究で108万人程度と推定されており,20年前(1980年代)の120万人と比較しても依然として多くのキャリアが存在している.地域別では,九州・沖縄地方を中心とする西南日本でキャリアが減少する一方,人口移動によるとみられる東京など大都市圏でのキャリア増加が明らかになり,水平感染の関与も指摘されるようになった.ATLは60歳代に発症のピークがあり,キャリアからの発症者数は,年間1,000人に0.6~0.7人と推定されている.
【発症機序】HTLV-1はデルタレトロウイルス属のレトロウイルスで,pX領域のTaxは感染細胞の増殖やアポトーシス抑制の機能をもつ.また,細胞増殖にかかわるウイルス遺伝子であるHBZは,HTLV-1プロウイルスのマイナス鎖にコードされ,キャリアからATL発症後にも発現している.キャリアの一部がATLを発症し,かつ発症まで長期間を要することから,発癌過程は多段階と考えられている.また,ATL患者ごとに腫瘍細胞に蓄積された遺伝子変異はさまざまであるので,TaxやHBZ以外の複数の遺伝子変異やエピジェネティックな変異の蓄積が,腫瘍化に重要な役割を果たしていると考えられる.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】皮膚症状は多彩であり,菌状息肉症を思わせる斑や局面から腫瘤を形成しうる(図25-4)図.また,小丘疹や小結節が多発するタイプ,紅皮症や小紫斑が中心で,時に慢性色素性紫斑を思わせる臨床像を呈するタイプもあり,多彩な皮膚症状が特徴(図25-4)図.皮膚生
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