診療支援
治療

AIDS(後天性免疫不全症候群)
Acquired immunodeficiency syndrome
木下 綾子
(順天堂大学医学部附属浦安病院)

病態

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV:human immunodeficiency virus)はレトロウイルス科のレンチウイルス属でHIV-1とHIV-2の2型に分類され,Tリンパ球やマクロファージなどのCD4陽性細胞に感染すると免疫不全状態となり,後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症する.

 主な感染経路として性的感染,血液感染,母子感染があるが,性的感染が最も多く,精液,腟分泌液のウイルスが体内に侵入することで他人に感染する.わが国では,同性間の性的接触での感染が多い.

 HIV感染症は大きく3つの病期(急性感染期,無症候期,AIDS期)に分けることができる.患者がHIVに感染すると,初期のウイルス血症に伴う症状が認められる.これは急性感染期とよばれ,インフルエンザや,伝染性単核症といったウイルス感染症の症状と類似するといわれ,47%で皮膚症状を認めるといわれている.その後,ほとんど症状なく経過(無症候期)し,CD4陽性細胞数が減少し,その数が200/μLを下回るようになると細胞性免疫不全状態を示し,日和見感染症,日和見腫瘍などのAIDS指標疾患を併発しやすくなる.わが国でも報告の約半数はニューモシスチス肺炎である.

【頻度】現在5類感染症であり,厚生労働省のエイズ動向委員会の報告によると,2019年の新規報告者はHIV感染者とAIDS患者を合わせると1,236件であった.新規報告数に占めるAIDS患者の割合は26.9%である.また,HIV感染者の72.1%,AIDS患者の54.1%が同性間性的接触が感染経路であった.

【診断・検査】①HIV感染症の診断:まず,血清中の抗HIV抗体や抗HIV-1,-2抗体による高感度のスクリーニング検査がELISAにより行われるが,偽陽性がまれに認められるため,必ず確認検査として,陽性の場合にはウエスタンブロット(WB)法と核酸増幅法(RT-

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