病態
ライム病は,野ネズミや野鳥を保菌動物とし,マダニがこれらの野生動物や人間に吸血目的で刺咬することにより媒介されるボレリア感染症である.本疾患はヨーロッパや北アメリカなど北半球において広く発生し,病原ボレリアや媒介マダニは地域により異なる.本邦ではシュルツェマダニにより伝播され,大部分がBorrelia bavariensis(患者分離株の約80%)により発症する.シュルツェマダニは北方系のため北海道では平地でも生息しているが,本州ではおおよそ標高1,000m以上の山岳地域に限られる.
本疾患は通常遊走性紅斑を初発症状とするが,皮膚のみならず末梢および中枢神経,心臓,関節,眼などの諸臓器にも多彩な症状を発現しうる全身性感染症である.
診断
遊走性紅斑は,マダニ刺咬の数日から遅くても2週間までに刺咬部を中心とする限局性の浮腫性紅斑として出現する.随伴症状として倦怠感,発熱,頭痛などの全身症状を伴うこともある.紅斑は遠心性に拡大し,中心部が褪色傾向を示すため環状にみえることが多い.経過が長い場合数十cm大にも及ぶ(図27-24)図.まれだがボレリアが刺咬部から血行性に播種して,紅斑が多発する場合もある.受診時皮膚表面にダニが残存しているなら通常診断は容易である.ダニが自然脱落するなど先行するダニ刺咬が明らかでない場合には,短期間で拡大傾向を示す限局性浮腫性紅斑を呈する蜂窩織炎,丹毒,虫刺症などが鑑別疾患となる.そのほかに注意を要する疾患にB. miyamotoiによる新興回帰熱がある.発熱,倦怠感,関節炎などの全身症状が前面に現れるが,まれに発疹も出現する.なお,ライム病は感染症法で全例報告対象となる4類感染症であり,保健所への届け出が必要である.
【問診で聞くべきこと】媒介マダニとの接触機会の有無を確認する.職業,趣味などによる棲息地域での作業,登山,トレッキング,山菜とりな
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