病態
ライム病は,野ネズミや野鳥を保菌動物とし,マダニがこれらの野生動物や人間に吸血目的で刺咬することにより媒介されるボレリア感染症である.本疾患はヨーロッパや北アメリカなど北半球において広く発生し,病原ボレリアや媒介マダニは地域により異なる.本邦ではシュルツェマダニにより伝播され,大部分がBorrelia bavariensis(患者分離株の約80%)により発症する.シュルツェマダニは北方系のため北海道では平地でも生息しているが,本州ではおおよそ標高1,000m以上の山岳地域に限られる.
本疾患は通常遊走性紅斑を初発症状とするが,皮膚のみならず末梢および中枢神経,心臓,関節,眼などの諸臓器にも多彩な症状を発現しうる全身性感染症である.
診断
遊走性紅斑は,マダニ刺咬の数日から遅くても2週間までに刺咬部を中心とする限局性の浮腫性紅斑として出現する.随伴症状として倦怠感,発熱,頭痛などの全身症