▼病態
深部静脈血栓症(DVT)は,急性期脳卒中の数%から40%に合併するとされ,脳卒中で麻痺を有する場合は高リスクとみなされる〔第3章の→も参照〕.発生率の差には,検査の時期や方法,脳卒中の病型などの影響が推測される.下腿静脈系,特にヒラメ筋静脈に多く,重度の下肢麻痺を呈する患者が,安静期を過ぎて離床を開始する時期に肺塞栓症を併発するため,積極的に予防,治療をする必要がある.
片側の下肢に浮腫,腫脹(径3cm以上の左右差)があり,紅斑がなければDVTの可能性が高くなる.Wells(ウェルズ)スコアなどを用いた臨床的可能性評価が低~中確率の場合には,Dダイマーを測定する.検査前確率が低く,Dダイマーが陰性ならDVTはほぼ否定的である.検査前確率が高い場合や,Dダイマーが高値のときは下肢静脈エコーを行う.危険性の低い下腿型DVTでも中枢側への進展の有無をみるために,5~7日以内に再検査する.